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8月シリーズ
〜 八月十五日に捧げる 〜



並木の梢が深く息を吸って、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を
歩み来た旅人は周章てて見付けた。

山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には
昨日私が昆虫の涙を塗つておいた。

風はリボンを空に送り、
私は嘗て陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。

騎兵聯隊上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿いの道を乗手もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。  逝く夏の歌    中原中也 詩



シリーズ名付:紙魚様
  目  次   
(※掲載の新しい順です)
 桃の願ふ
 〜空はどこまでも青かったII〜

   (2016.08.14)
…… 勝次郎の兄は、誰もが憧れる海軍士官で、病勝ちで徴兵されなかった兄を持つ幼馴染の弘之からは羨ましがられている。
悪い気はしなかったが反面、勝次郎もまた弘之を羨ましく思っていた。
 鄙某日  (2015.08.11〜)

  (前) (後)
  
…… 三人の弟達の戦死を機に、静生は教師として長年暮らした町から故郷に戻って農家を継いだ。
田畑仕事や、戦時下とは思えない長閑で変わり映えのない暮らしにも慣れ始めた頃、寡婦となった弟嫁との仲が噂になっていることを知る。
 恋バナ  (2014.08.15〜)

 (前) (後)



…… 東京大空襲で焼け出され、休学して実家の岡山に戻った音楽学校学生の鶴原容子は、移動劇団に誘われて中国地方を巡演する日々を送っていた。広島に入り、そこで知り合った提灯舗の若旦那・小松英治に、三日坊主にならない日記の書き方を教わり、日々感じたことを書き記すようになる。
(『永遠の音楽』続編)



 ハーモニカ  (2013.08.15〜)
  (BL)

 (1) (2) (3) (4)前 
 (4)後
 (5) (6) (7・完)
…… 音楽学校のピアノ科の学生だった池辺信乃夫は学徒徴兵され、昭和二十年、『不沈』とあだ名される戦艦に乗っていた。
戦況は悪化の一途をたどり、信乃夫の所属する艦隊にも、いよいよ海上特攻の命令が下る。
(『永遠の音楽』続編)
 永遠の音楽 (2012.08.03)

(1) (2) (3) (4) (5) 
(6)
 (7)
 (8) (9) (10 
(11) 
(12) 
(13・完)
…… 昭和十八年の春、私は念願の音楽学校に入学した。同じ音楽塾で学んだ尚さんとの再会、信乃さん、容子さんと出会う中、期待に満ちた学生生活が始まった。しかし時は大東亜戦争の真っ只中で、私達も否応なしに時代の波に呑まれて行くことに。
 相聞歌  (2011.07.10)
  (BL)
…… 同居していた大伯父が亡くなり、遺品を整理していた佐衛士は、押入れの戸袋にひっそり仕舞われた文箱を見つける。その中には自由にならなかった時代の、封印された「恋心」が入っていた。
(『空はどこまでも青かった』『相府蓮』続編)


 相府蓮  (2009.09.19)
  (BL)
…… 帰郷した幼馴染で親友の進一郎に想う相手がいたことを知り、英治の心中は揺れる。
(『空はどこまでも青かった』『相聞歌』続編)
 空はどこまでも青かった
   (2009.10.01)
…… 弘之は勝次郎が羨ましかった。勝次郎の兄は海軍士官で町の英雄であるのに、彼と同い年の弘之の兄は徴兵検査に通らなかったにも関わらず、のんびり日々を過ごしていたからだ。


2009年7月より開催された
『眼鏡祭2』参加作品。
 その花の名は『思ひ出』
  (2008.04.08)
…… 世の中が暗い影に覆われ始めた時代、出生の複雑さで村の子供達から仲間外れにされる少年・正一は、遠い異国からやってきた青年・ロバートと心を通わせるようになる。  ※2009年2月23日改訂


2008年4月5日に開催された『お題バトル』参加作品。