[ VII ] 翳りゆく空



 
「そのような条件、承服できるかっ!!」
 サイドル王国の隻腕隻眼の宰相ウィレム・オトゥール侯爵の声は、左手の拳で机上を叩く音と共に聖堂の中に響き渡った。その場にいるすべての目が彼に向けられる。自教区代表の護衛として議場の片隅に詰めるシムルとカインの目も、その中に含まれていた。
「オトゥール…」
 傍らのイリス九世女王が、興奮して立ち上がった彼を見上げた。それから「落ち着きなさい」と言うように、腕の存在がない彼の右袖を軽く引く。ウィレムは女王の嗜める表情に、大きく一度、肩で息をした。乱れて頬にかかった黒髪を払いのけ、椅子に腰を下ろしたがしかし、左目は円卓を囲む一人の男を睨んだまま動かなかった。
 睨まれた相手――ユリウス・トレモント公爵は、自分に向けられる視線に、怯む様子はなかった。銀に近い金髪に縁取られた優しげな面差しに不敵とも取れる笑みを浮かべ、「それでは」と言葉を継いだ。
「この案はお気に召さないと?」
「当たり前だ。王室の解体、国土の分割、公爵はサイドルを失くする気か?」
 ウィレムの答えに、ユリウスは一層優雅に笑んだ。
「宰相はまた、ずい分と曲解なさるものだ。私が提示したのは女王陛下の退位と、各公国の自治の確立なのだがね」
「九世女王に退位を奏上なさる理由は、何だと申される?」
 アリアドニ聖教区代表のアウリープ・コンラート大司教が尋ねる。ユリウスはウィレムから彼に目を移した。
「百年の清算だ。陛下だけに責任を負って頂くわけではなく、公国の領主もすべてその地位から退いて頂く。もちろん、この私もだ」
「では九世女王の後継に、元マルベリ公爵家のリリアナ姫を推されるのはなぜです? マルベリ家はドヌーブ(ドヌーブ戦役)で断絶し、姫は確かそう、トレモント公、あなたの後宮に入られたはず」
 目元口元に少女期の丸みを残すエンマ公姫の言葉には、ユリウスではなくコーラルアーシェ聖教区の若き代表ハーモン・ルクレール大司教代理が答えた。
「マルベリ家と言えば、サイドル王室の正統なる傍流。後継にと公が推されるのは当然だと思われまするが?」
「正統な傍流だと? 傍流と呼ばれる公爵家は六家あった。その中でもマルベリは六の四、後継順位では下位ではないか。だいたい、公国の後宮に入り、手垢がついた姫を後継だなどと、片腹痛いわ」
 ウィレムはハーモンに向かって言ったが、ユリウスを意識しての言であることは明らかだった。
 ウィレムはユリウスより七歳年長ではあるものの、身分としては公爵より格下の侯爵である。しかしウィレムが少年の頃よりその才を愛でた前国王が自分の死に際し、序列を無視して歴代最年少で宰相の座を与えたと言う事実と自信が、誰に対する時も彼の歯に衣を着せたことはなかった。
 不具となるまでは歴戦の雄として名高かった彼の、鋭利な光を湛える黒曜の隻眼に、当て馬であるハーモンはすっかり射すくめられている。
「後宮入りしたマルベリの姫を推すならば、他の後宮に納められた姫や、野に下った公子でも良かろう? 六の一であるシュタウヘル家や二のセーブル家、三のウェグランド家にも公子や姫はいたはずだ」
 ウェグランド家の名が思いがけずに出て、シムルは落としていた目を上げ、ウィレムに向けた。ちょうど彼は皮肉を含んだ笑みで顔を歪ませたところだった。
「そうだった、残った公子は死か断種を賜っていたな、どこぞの公国との戦いに敗れて。姫達も同盟公国に納められたものの、不明の病を得て身罷っている者がほとんどだ。いや、まったく恐れ入る、その手腕には」
 ウィレムは、今度ははっきりとユリウスを見た。二人の視線は交差して、お互いから外さない。
「宰相殿におかれては、まるで私が何か策を労したかの仰りようだな」
 口元には笑みを浮かべてはいるが、ユリウスの青みがかった灰色の瞳は笑っていなかった。
 『黒のウィレム』、『銀のユリウス』と内々であだ名されるほど、見目も声音も言動も、何もかも対照的な二人が円卓を挟んで対峙する。彼らの言葉が途切れると、緊張を含んだ沈黙が聖堂内を支配した。
「お二人とも、落ち着かれよ。早朝から続けての議場で、方々もお疲れのご様子。ここらで少し、休憩を取られた方が宜しかろう?」
 アリアドニ代表がその沈黙に割って入った。緊張が緩む。
 アリアドニ聖教区代表のアウリープ・モネ大司教は、今回の円卓会議出席者中、一番年嵩で冷静であった。聖教区は中立の立場であるが、長い戦乱の間にいずれかの陣営に傾くこともあった。この会議においても、コーラルアーシェ聖教区などはあきらかにトレモント寄りと見受けられたが、アリアドニ聖教区は本来の立場を貫いている。その真摯な姿勢が信頼を得て、「ここ」と言う場面ではアウリープ大司教がまとめ役となっていた。
 休憩の提案に否の声は上がらなかったので、会議は一時中断された。それぞれの護衛達は、自分たちの代表が退出するのに付き従う。
「お疲れ様です」
 シムル達アリアドニ代表の護衛は、アウリープ大司教を囲む。
「まったく疲れたよ。私は宿舎で少し仮眠を取るから、君たちもその間、休息を取るといい。今日もまた長くなりそうだ」
 大司教の削げた頬には疲労の色が滲んでいる。従僕を務める修道僧が「早く休んだほうがいい」と退室を促した。
「この会議の先はすでに見えているのかも知れぬ。それを先延ばしにするために、時間を無駄に使っているのだ。なんと不毛なることか」
 議場を出る間際にアウリープ大司教は呟いた。
「不毛だなどど、アリアドニの大司教は何を悲観される?」
 アウリープの呟きを拾ったのは、扉のところで一緒になったコーラルアーシェのハーモン大司教代理である。アウリープの半分以下の年令と思われる若さの彼は、疲労の度合いも半分以下に見える表情で、アリアドニ代表の行く手を止めた。
「話し合いの余地は残されているではありませぬか。私はトレモント公爵の出された条件も、講和の案として話し合うに足ると思っておりますが?」
「お若いな、フレール(兄弟)・ハーモン。公爵はあの条件が通るなどとは思っておられますまい。いや、むしろ、あれをきっかけにして、更に時間を引き延ばそうとされているやも知れぬ」
 アウリープは止めた足を進めた。
「それはどう言う意味なのです?」
 あわててハーモンが隣に並んだ。護衛の修道騎士達は、お互いを牽制し合いながら後に続く。
「ご覧になった通りだ。あの条件では王室側もダルトリ公国も納得されまい。全てを代替わりなさったとしても、後継がリリアナ姫ではその後ろにトレモント公爵の影が見え隠れするだろう。そのようなあからさまな思惑に、宰相閣下が是と申されぬのは想像するに容易い。それを承知で公爵は提示されたのだ。つまり、」
 つまりユリウス・トレモントはこの円卓会議で講和は成立しないと確信している。自国に有益な講和でなければ、成立しても意味はないと思っているのだろう。であるなら、捨石とも取れる話し合いの種を撒いて時間を稼ぎ、その間に兵を休め、次の戦の為に力を蓄えようとしても不思議ではない。あるいは、すでに体勢は整っており、これ以上は時間の無駄だと話を切るつもりであの条件提示したのではないのか――アウリープとハーモンの後ろで話の内容を耳にしながら、シムルはさきほどまでのやり取りを反芻して思った。騎士に過ぎない自分でもわかるこの構図を、宰相ウィレム・オトゥール侯爵はもとより、聡明と名高いイリス女王もエンマ・ダルトリ公姫も読んでいることだろう。彼らもまた、時間を作ることによって、疲弊した自軍の立て直しを図っているのではないか?
「皆が皆、茶番を演じておられるのだ。これほどの不毛があるだろうか?」
 シムルの心の内は、アウリープ大司教が代弁した。
「では皆様方が、来たる戦のための休憩として、この会議を引き延ばしていると? ですが、宰相閣下のお怒りのご様子はとても芝居には見えなかったですよ?」
「宰相閣下は軍師でもあられる。激昂はトレモント公爵の真意を量るするため。そしてトレモント公は宰相閣下の挑発には乗らず、かわされるばかりであった。あの駆け引きから察するに、宰相閣下は状況を充分に把握されておられるはずだ」
 一行はノイエル大聖堂の正面玄関まで来ていた。どんよりと雲が垂れ込めて、夕暮れにはまだ早い時間だと言うのに、辺りは薄暗くなっている。今しも雨が降りそうであった。
「急がなければ雨が来よう。申し訳ないがフレール・ハーモン、ここで失礼するよ。あなたも充分に頭と身体を休ませなさい。疲れは思考力を鈍らせる。狡猾な『話芸』に振り回されますぞ。では」
 アウリープはそう言うと歩速を上げて、外に続く階段を下りた。そうしてアリアドニの一行は、コーラルアーシェの代表を振り返りもせず、宿舎へと足早に向かった。
 
 

 
 怪しげな雲行きの空を見上げ、「今日は来ないかもしれない」とアーロンは思った。
 ラフと呼ばれる庭でシムルと会うようになって、一週間が経っていた。と言っても会う約束をしているわけではなく、アーロンが午後からここに来て、シムルが休みに来るのを待っているのだ。彼の休憩の時間は決まっていない。午後の早い時間であったり、夕刻であったり、またその日の任務によって来る、来ないが決まるようだった。代表の護衛につく日は一日中、円卓会議場に詰めることになるため、ラフには来なかった。そして、どの任務に就くかは部外者であるアーロンに教えてはくれない。だからアーロンは待つことしか出来なかった。
 来るとも来ないとも知れないシムルを待つ間、リサーチして書き付けたメモをまとめることがアーロンの日課となっている。コンピューターもレコーダーもないこの時代では、研究所以外では紙に書き綴ることしか許されていない。それも原始的な製法で作られた粗悪な紙にだ。羽の先を削ったペンに、油煙から作られたインク――これらによる筆記作業が、アーロンにとってなかなかの難敵だった。何しろ本来、彼が存在する世界には、手書きで筆記の必要性がほとんどなかったから、まず字を書くと言うことが一苦労なのだ。その上に凹凸のある紙面に度々ひっかかるペン先。書面の綴り字は、書いた本人以外にはとても読めそうになかった。
「ティオキアの文字は、独特なのだな?」
 声が降ってきた。
「シムル」
 目の前にシムルが立っていた。アーロンの手元を覗き込んでいる。あわてて紙面を折りたたんで、字を隠した。アーロンは『自分の時代』の言語を使っているので読まれる心配はないのだが、言うことを聞かないペン先が勝手に作った数々のコンマやアポストロフィー、まっすぐ綴れず蛇行している文章を見られることは恥ずかしかった。アーロンは「少しわざとらしかったかな」と思ったが、シムルは気にする風でもなく隣に腰を下ろした。
「今日は来ないのかと思ったよ」
 筆記の道具を片付けて、アーロンはシムルを見た。
「休憩の時間が取れたので。君の方こそ、いつも来ているのか?」
 定まらない休憩時間にラフを利用する時、常にアーロンの姿がこの場所にあることが不思議なのだろう。シムルの緑の瞳はそう言っている。実際アーロンは午後からの自由行動の時間を、ほとんどラフで過ごしていると言っていい。論文主題が修道騎士団の事柄であるから、宗教地区でのリサーチが主になってくる。しかし、現在のコーラルアーシェの状況では自由に地区内を歩き回ることは難しい。法王庁発行の身分証――勿論、偽造――を持ってはいても、異邦人が一人でうろうろするのは、やはり目立つものがあった。修道騎士には止められずとも、王室や公国などの兵には止められる。その煩わしさが、アーロンをラフに引きこもらせるのだった。
「今の状況は余所者には辛いからね。それにここの方が、君たちの姿を見られるような気がする。君に話も聞けるし」
 このラフに来る、それが一番の目的だ。
「大した話をしているわけではないから、見聞の役に立っているとは思えないけど」
「そんなこと、ないよ。僕はこの国のことをあまり知らないから、ちょっとしたことでも参考になる。それよりも、君の貴重な休み時間を潰しているんじゃないかな。それに…話辛いことも聞いているかも知れないし」
 アーロンの研究論文の内容は、修道騎士の信仰心とその矛盾性に触れる事柄が主要となっていた。剣を持つことを許されない身でありながら、それを手にして人命を奪うと言う究極の矛盾。祈りの時間に見る彼らの無垢でひたむきな姿には、矛盾を受け入れざるをえない痛々しさがあった。
 シムルは首を振った。それから笑って、
「趣味嗜好や休日の過ごし方など、辛い話だとは思わないけど?」
と問い返す。
「え? そんなこと聞いた?」
「だから大した話をしているわけではないと言ったんだ。修道院での日常とか聖教区の話とかばかりだ。本当はもっと違うことを聞きたいのではないのかと思って」
「いや、それは…。どれも本当のことだよ。他愛のない話の中にも、神の存在が感じられるから」
 苦しい言い訳だとアーロンは思った。聞くべきことを聞けないことは本当なのだが、シムルに対する興味が質問をすりかえていることも事実なのだった。
「それならいいけど」
「あ、でももし出来るなら、宗教地区の中を案内してもらえないかな? せっかく歴史的な場面に居合わせているのに、未だに大聖堂に近づけないんだ。無理なことはわかっているけど、せめてもう少しここを自由に見てみたい」
 アーロンの言葉にシムルは考える風に髪をかきあげた。
「それは難しい。信徒のミサも執り行えない状態だから。でも、そうだな、幕舎の前までなら案内出来ると思う」
 幕舎は騎士や近衛兵たちが常駐する護りの要で、何かあってもそこで止めることが出来る。その考えが少なからずシムルに働いているのかも知れなかった。やはり部外者は部外者と言うことか。仕方がないことだと割り切って、アーロンは「ぜひ」と答えた。
「フレール・シムル」
 二人が談笑しているところに、くせのある黒い髪を後ろで束ねた修道騎士が近づいてきた。アーロンよりも幾分年若い。鮮やかな真紅の瞳、グレンと言う騎士だ。
 グレンはアーロンを見て顔色を変えた。シムルと彼とは休憩が重ならないようになっているらしく、彼ら二人が同時にこの場所に居合わせることはなかった。アーロンがグレンと会うのは、時間航法実習の初日、ここに転送されたあの日以来となる。
「おまえは…っ。フレール・シムルが異邦人と一緒にいるとは聞いていたけど、おまえだったのか」
「フレール・グレン。『おまえ』呼ばわりは良くない。彼は東方から来た神学生なのだから。法王庁の朱印も持っている」
 グレンの口のききようを、シムルが嗜めた。しかしグレンは強い視線でアーロンを見つめたままだ。
「それが本物かどうかをどう証明するのです? 俺達は法王庁の印も、法王の手(筆跡)も知らない。いくらでも偽造は出来る」
 彼の鋭い指摘に、アーロンの心中が緊張した。近衛兵や衛兵には見咎められてことはあっても、修道士には法王庁発行の身分証を表立って疑われたことがなかったからだ。ルビー鉱石を溶かしたようなグレンの瞳は、偽造を疑って光った。
「偽物だとも証明は出来ない。コーラルアーシェの審査官が是としたのだから」
「俺は信じたいと思うものしか信じない」
「グレン」
 意志の強さを感じさせる目。この感じは、どこかで覚えがある。初めの日の時ではなく、それ以前に――アーロンはグレンの瞳を見つめながら思った。
 二人の間に立つシムルは、グレンの肩に手をかけた。
「私に用があるのじゃないのか?」
 グレンの意識はそちらに向き、視線をアーロンからシムルに移した。
「フレール・ソードからの伝言です。すぐに代表宿舎に来るようにと」
「代表宿舎に? 大司教は寝んでおられるはずだけど?」
「使い走りの俺に聞かないでください」
「わかった。ではアーロン、これで失礼するよ。グレン、戻ろうか?」
「でも」
とグレンはアーロンに目を戻す。
「正体の知れない人間を二度も見逃すほど、甘くはないつもりです」
 腰にある剣に手をかけた。アーロンがもし逃げるなり、逆らうなりの態度を見せれば、彼はその切っ先を向けるだろう。戦う意思のない相手に臨戦態勢に入ることは修道騎士の規律に反する行為だが、彼には迷いがない。修道士とは思えない殺気が、アーロンには不思議でならなかった。
「以前、フレール・ソードにも言われただろう? むやみに剣に手をかけるなと。私達は騎士である前に修道士であることを、忘れてはならない。剣は持っても、心まで武装する必要はない」
 シムルの言葉にグレンが怯む。それを見逃さずに「急ごう。大司教がお待ちなのだろう?」とシムルが続けた。
 キュッと一度唇を引き結んで、グレンは渋々「わかりました」と答える。
 緊張した空気が緩んだ。アーロンはホッと息を吐く。
「さっきの話、次に会えた時にでも」
と、シムルは礼をとった。
「うん、楽しみにしているよ」
 アーロンが同様に礼をとったのを見て、シムルはグレンを促しその場を離れて行った。グレンは振り返って、アーロンを見る。シムルがいなければ、何か理由をつけてあの剣を抜いていたかもしれないと思うと、アーロンは今更ながらに手に汗を感じた。
 シムル達が去ってほどなく、ぽたりと空から雫が落ちてきた。落ちる間隔は見る間に早くなり、そして本格的な雨となった。ラフで休んでいた騎士達は、出口に向かって一斉に駆け出す。アーロンは枝葉を大きく厚く広げた木の下に入った。シムル達もこの雨に遭っているだろうか。
 別れ際のシムルの言葉を思い出す。次に会う時は、障りのない場所を案内してくれると言う意味だ。実習期間はもう幾らも残っていない。彼との時間もそれと比例している。なるべくその時間を作りたいと思うアーロンの気持ちが、約束を求めているのだ。
 

『私達は騎士である前に修道士であることを、忘れてはならない。剣は持っても、心まで武装する必要はない』
 

 生きる時間と場所が違っても、アーロンとシムルは立場が似ている気がした。自分たちの意思とは違う状況に、否応なしに取り込まれ、享受して生きる――アーロンは『適性』と言う名の元に、シムルは『時代』と言う名の元に、変える術を持たず、ギャップを埋められないジレンマに足掻くことすらあきらめて。
 本降りとなった雨で、ラフが緑に煙ぶる。シムルの瞳と同じ緑だ。そして今一つ別の色が、アーロンの脳裏を過ぎって行った。
 鮮やかで印象的な真紅。グレンと言う修道騎士の瞳の色。過剰なまでの彼の反応は余所者全てに対してなのか、それともアーロンにだけなのか。まだそれを見極めるほど、アーロンは彼を知らない。しかしいつまでもその紅い色は、頭から離れなかった。
 





                 (2010.09.07)



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