■ キャラクターの出来上がり方 ■ 自分の場合、今まで漠然とキャラクターと筋立ては同時に出来上がると思っていたのですが、根拠はあまりなく、深く掘り下げてみたこともありません。 いい機会だから、作品を分析してみます。 拙作に『其は匂ひの紫』と言うのがあります。 某所での企画参加作品で、その企画にはルールがありました。 ・BLであること ・指定の一文「その美しさに感動するし、その美しさを絶対に許せない」を文中に入れること(ちなみに指定の一文は、高河ゆん氏の『LOVELESSG』の中から出題されたもので、その出典を当てることも企画の一部。加工可) BLはともかく、この一文を組み込むってことが難物で、その上、この耽美さ加減(笑)。 何を題材にするかと思ったところで、「贋作」と言うキーワードが頭に浮かびました。 贋作と言えば油絵(単純・笑)。 日本人の有名洋画家(作品数僅少)の贋作をはじめ、精巧な贋作が巷に出回って、画壇をかく乱するようになる。 その出所を若き画廊主が追うと言う設定。 贋作を描いているのは、素晴らしい才能を持っていながら、金銭面と、他に何らかの理由で自分の絵は描かず、色んな画家の贋作で生計を立てているヤツ…ってのはどうだろう? で、画廊主は彼を見つけ、その才能に驚愕。 贋作画家本人の絵を見たいと切望、彼のもとに説得に通うようになる。 ・実はこの贋作画家は、冒頭の「日本人の有名洋画家」の息子。 ・父である画家は絵のために妻子や生活を省みず、妻は貧困の中で彼に尽くしたあげくに病死。 ・息子は父と『絵』の世界を激しく憎悪して、家出。 ・やがて贋作画家として絵の世界に出現。 ・絵の真偽も見極められない似非画商や、資産価値として絵画を買い漁るヤツらが、贋作画家の絵を本物だとありがたがって買うのをシニカルに見ている。 ・絵を憎んでいながら、その世界から離れられない。 最終的には主人公の画廊主を憎からず(恋愛感情的)思うようになり、また絵に対する自分の情熱も自覚して、本当の自分の絵を描き上げ、その一枚の絵と、あのお題の言葉と、一夜の情(お約束・笑)を残して姿を消す。 そしてまた、画廊主は彼を探し続ける。 プロットとしてはこんな感じ。 この時点では、キャラの性格も容姿も年齢も、はっきりと決まってません。 BLには不可欠な役割(攻・受)もまだです。 結局、この案はボツになりました。 理由は油絵にそれほど萌えがなかったから(笑)。 多分、ありがちな設定だし、ありがちな題材だなと。 父と子の関係より、もっと違うものはないだろうかと。 で、贋作と言う点と、それを追う存在(画廊主の役割)、作品を作り上げることは生かして、他の設定は振り出しに。 友禅に前々から興味があったので、これを機会に書いてみようかなと思い、設定を油絵から染物に変えました。 ・古着市場に不世出の友禅師(故人)の名を騙った贋作着物が出る。 ・地の色が彼しか出せない幻の色 ・弟子がその贋作の出所を追う ・友禅師には家を出た同じく友禅師の息子がいる ここで決めたのは幻の色=紫(高貴で神秘的なイメージがあったから) そんでもって、 ・息子はすでに故人 ・贋作者は息子と同居していた男 ・弟子のしつこい説得に折れて、友禅の大振袖をつくることに。 ・息子の死の原因、贋作を染めた理由 ・最後に出来た大振袖の前でお題の一文 とまあ、大まかな流れが決まり、ここからキャラクターなどの設定を始めました。 <弟子・川村> 故友禅師の最後の弟子。 一番若い弟子(30代前半)でありながら師匠の名前の一字を受け継ぐほどの染師であり、工房の後継者。 独身。 幻の紫色を染められないまま、後継を名乗ることに迷い有り。 性格は真面目。 <贋作者の男・鳴沢> 友禅師の息子の弟子で友人(30代半ば)。 実は友禅師の息子を好きだった。 彼の忘れ形見である小学生の息子を育てている。 友禅師の息子が幻の紫色に取り付かれて命を落としたようなものなので、友禅を憎んで染めを止めた。 性格は飄々。 彼らに加え、脇役(小学生の子供、水元専門の工房主)を設定。 他、もっと詳細な人物設定(川村は中学卒業して高校に通いながら工房に入ったとか、鳴沢は工芸大学中退だとか)、生活背景(川村の現在の工房での立場とか、鳴沢の仕事とか)、息子の死の原因、贋作を染めた理由などなどを設定、構成、エピの配置を大雑把に決めて、書き始めました。 となると、キャラクターの詳細は結局、プロットの後になるのかな。 まず話ありき? じゃないと、性格も生活背景も決まらなかったと思うし。 キャラクターありきで書いたのは、二次創作が顕著な例かもしれない。 二次創作は私の場合、キャラ萌え(笑)なので。 |