『其は匂ひの紫』 〜あとがき?〜 





『その美しさに感動するし、その美しさを絶対に許せない』


 このお題が発表された時、正直、目が点になりました――「うへ〜、何て御耽美な。こりゃ私には書けないかも…」と。
 それでも何となく参加しないと言うのは寂しかったので、つらつら考えていたらば、生物に対して使うのは無理だけど、それ以外のものなら使えるかも知れないと思うようになりまして。
 したら何がいいか? 最初は絵画の贋作ってのが浮かびました。
 贋作専門の画家(受)が正統派の画家(攻)と出会ったことで、『本物』を描くと言うことに目覚め、一枚の絵(彼自身の)を攻の画家に残して去って行く。お題は残されたその絵を見て、攻の画家が呟くってのはどうだろう…と。
 でも思いのほか話が広がらなかったんですよね。
 多分、私が、今イチ油絵などの絵画に興味がないのと(絵画の良さってわからないんです。写真みたいなわかりやすいのが「きれい」「良い絵だぁ」と思う程度で)、絵画の贋作の話ってよく使われているからだと思います。
 『偽物』ってとこはどうしても外せなくって、それで以前から書いてみたいと思っていた友禅の世界に、置き換えることにしたんです。
 一応、友禅のことは調べたのですが、実際にそれに携わっている人からみたら、「何じゃこりゃ」なところばかりだと思います。そこはそれ、創作物の世界ですから、物語の中のことだとご理解ください。
 ものすごく自分自身で萌えてしまいました(笑)。
 どんどんエピソードを詰め込んで長くなってしまって、ずいぶんスリムにしましたが、気がつけばテーマの『BL・GL』は何処に?…状態で。
 おかしいな、当初の予定では色っぽいシーンもあったはずなのに(笑)。
 そんなBLと言う点から見れば消化不良な作ですが、楽しんで頂ければ幸いです。
 

                       H20.05.01 紙森けい



 

※ プラウザを閉じて、お戻りください。