[ Midnight Blue 〜闇色に溶ける〜 ]




「腰に手を回されるのは、主義ではないのですが?」
 夜目にもエヴァンスが微笑んでいるのがわかった。
「ほら、身長が変わらないから、腕を回すのにちょうどいい」
 篁の言葉など半ば無視して、彼は耳元で囁きかける。普段の会話でもかなりの美声だが、こうして語尾をぼかす様な話し方をすると、色気が加わった。気のせいではなく、エヴァンスは篁を口説きにかかっている。吐息が耳朶にかかって、今しも唇が触れそうだ。
 これぐらいで動揺するほど初心ではない。

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