[ Blue Gray 〜吐息の記憶〜 ]  




 エヴァンスが言い終わらないうちに、背後から声がかかった。振り返ると年恰好が篁と同じくらい――年齢は多少上かも知れない――の男が立っていた。おそらくこの個展のアーチストだろう。灰色がかった青い瞳とフランス語訛りの英語が印象的だった。
 彼はまず最初に振り返ったエヴァンスを、それから篁を見た。途端に表情が変わる。大きく目を見開き、篁を凝視した。
 そして搾り出すように言った。
「まさか、エメ…なのか?」

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