※この作品は、三鷹美咲様より、贈り物として頂きました。
  著作権は三鷹美咲様にございます。



拙作『大正SOUL−帰来−』への感想として、賜りました。
(下記文章は該当箇所です)

                                                          (2007.11.19)

「実際、いなかったのさ、真行寺馨なんて」
 来去する過去の場面は、抑揚のない馨の声に消えた。
「じゃあ、おまえは誰なんだ」
「谷間白百合。発禁処分常連の、艶文作家や」
 懐に入れていた手をだすと、薄い冊子が握られていた。それを清一の胸元に差し出す。
「谷間白百合? 『月陰』の?」
「よく知ってるな。あれは発刊する前に抑えられて、ほとんど出回ってないはずやけど」
 馨はニヤリと笑った。それから差し出した冊子を、再び懐に戻す。
「どこで読んだか聞かんとこ。どうもおまえからは、きな臭い匂いがする。関わらんほうがええみたいやな」
 そう言うと、清一に背を向けた。
 とっさに清一は彼の肩を掴む。
「馨!」
「その名前は嫌いや。もう俺の名前やない」
 馨はやんわりと肩にかかった清一の手を払った。

                            
『大正SOUL―帰来―』本文より



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